高知県が5月15日に発表した南海トラフ巨大地震による最終被害想定では、県内全域で死者が最大42000人などの人的被害が出された。このうち津波による死者は36000人と多数を占める。県では今後、第2次行動計画に減災目標を掲げ、優先順位を付けた対策をさらに加速化する。
人的被害を限りなくゼロに近付けるための対策の中心となるのは、まず逃げるための津波避難タワーや避難路などの整備だ。今後の整備方針などについて高松清之高知県危機管理部長に話を聞いた。
―2013年度の高知県内における津波避難タワー建設計画と津波避難路整備計画、またこれらに係る補助金の概要を聞かせてください。
今年2月の調査結果によれば、避難タワーが72カ所、避難路・避難場所が672カ所を見込んでいる。 県では13年度「高知県津波避難対策等加速化臨時交付金」の制度を設けた。この制度は、国の緊急防災・減災事業債を活用して整備した津波避難施設について、市町村の実質的な負担相当額を交付金として翌年度県が交付するもので、市町村は負担ゼロで避難対策を進めることができる仕組みとなっている。13年度の県の交付金予算額は7億8050万円である。
―津波避難タワーと津波避難路は、将来的に何カ所整備する方針ですか。
今年2月の調査による総整備計画数は、避難タワーが117カ所、避難路・避難場所が1354カ所。13年度末での累計完成数は、津波避難タワーが90カ所、避難路・避難場所が1033カ所を見込んでおり、最終的な整備計画数の8割弱となる。
災害は夜間に発生することも考えられる。そのためにはまずは訓練が必要だが、避難路の入口に太陽光発電や蓄光材、LEDを使って分かりやすく表示することも考えられる。現場で何が起こるかをリアルに想像し、これから細かく対策を立てることが大事になる。
―県では、津波避難タワーの設計や津波避難計画の策定に関してガイドラインを策定しています。このガイドラインの意図と、各自治体に求めることは何ですか。
県では「津波避難タワー設計のための手引き」を昨年10月、「高知県津波避難計画策定指針」の中間とりまとめを今年2月に公表した。 津波避難タワー設計のための手引きは、タワーの整備を進めるにあたっての自治体職員向け手引書として作成した。津波浸水予測に対応した安全な避難場所の確保には、タワーの迅速な整備が必要だが、設計のための参考情報を取りまとめ、県や市町村のタワー整備に係る業務を適切かつ効率良く進めることが策定の目的である。 高知県津波避難計画策定指針は、東日本大震災の経験などを踏まえ、従来の指針を見直したもの。具体的には、避難までに必要な時間や、避難方法ごとの移動速度、避難施設の特性など、津波避難計画を策定する上で必要な情報をまとめている。
―第2期高知県南海地震対策行動計画の策定を進めていますが、主な内容を教えてください
この計画は、東日本大震災の教訓を踏まえ、最大クラスの地震津波想定にも対応できるよう、対策を抜本強化するため見直すもので、6月上旬には完成する見込みだ。期間は13年度から15年度までの3カ年で、従来から進めてきた命を守る対策に加え、助かった命をつなぐ応急期の対策もおおむね完了させる。
計画は四つの視点で構成している。一つは震災に強い人づくりのために、防災意識の啓発、防災訓練、防災士の養成など県民みんなで南海地震に備えること。二つは被害を軽減するために、建築物の耐震化、津波避難路・避難場所の確保、津波火災対策など予防策を講じて被害を最小化すること。
三つは応急対策の速やかな実行のために、総合防災拠点の整備、緊急ヘリの離発着場など救助救出と被災者救護活動を行い、被害のさらなる拡大を防ぐこと。四つは着実な復旧・復興のために業務継続計画の策定や地籍調査の推進など巨大災害から1日も早く立ち直ること。対策取組数は181項目余りあるが、PDCAサイクルの中で必要があれば随時増やす方針だ。