着々と延びる「新たな命の道」。三重県尾鷲建設事務所管内では2013年度、「命の道」の一部を担う熊野尾鷲道路と紀勢線のうち紀伊長島インターチェンジ(IC)から海山IC間が供用を開始する。同事務所でも、開通に合わせアクセス道路の整備が順調に進んでいるほか、発生の確率が高くなっている東海・東南海・南海地震に備え、救援ルート確保のための整備に力を入れている。
また、11年の台風12号の被害を受け通行止めとなっている国道425号も復旧のめどが立っている。災害に強い地域をつくるため、さまざまな事業を展開している三重県尾鷲建設事務所の中野伸也所長に13年度の事業計画を聞いた。
―まず、高速道路関連事業から聞きたい。
「当地域では、緊急時の救助・救援、災害時の復旧・復興を担う『新たな命の道』として近畿自動車道紀勢線、熊野尾鷲道路の整備が進められており、13年度には近畿自動車道紀勢線(紀伊長島IC〜海山IC)、熊野尾鷲道路全線の供用開始が予定されている」
「当事務所においても、熊野尾鷲道路(賀田IC)のアクセス道路である賀田港中山線(賀田インター線)で工事を進めており、現在、橋梁上部工と現道への取り付け道路工を施工中である。残工事である法面工事、舗装工事を発注し、熊野尾鷲道路の供用開始に合わせた整備を進めている」 「14年度は熊野古道世界遺産登録10周年となる。紀勢線と熊野尾鷲道路の整備により観光客の利便性も大きく向上し県内外の交流・連携が促進するものと期待している」
―管内の他の主な道路事業は。
「紀北町紀伊長島区十須の国道422号では1・5車線の柔軟対応で工事を進めている。その他の事業では、海山区矢口浦の県道矢口浦上里線などで工事を進め、紀伊長島区長島の県道長島港古里線で用地買収に着手する。尾鷲市南浦の国道425号については、11年の台風12号により道路法面の大規模崩落があり、現在は通行止めとなっているが、災害関連事業として洞門工(ロックシェッド工)を整備し年度内に完成する予定だ」
「多くの公共土木施設の老朽化が進む中、トンネルや橋梁などの道路構造物の計画的かつ効果的な修繕・更新などを着実に行うため、施設の劣化などの現況を把握する点検も実施する予定だ」
―災害に備えた事業では何を行うのか。
「大規模地震・津波が発生した際に孤立が懸念されることから、道路啓開(救援ルートの確保)を迅速に展開できるよう、資材を備蓄する道路啓開基地の整備や、道路をコンクリートで覆うなどの道路構造の強化に取り組んでいる。啓開基地については紀北町海山区の県道矢口浦上里線、尾鷲市の県道三木里インター線で整備を進め、道路構造強化については、尾鷲市の国道311号、紀北町の県道須賀利港相賀停車場線などで工事を進める方針だ」
「その他の事業として、紀北町の国道422号、県道南浦海山線などでは災害防除事業を行い、緊急輸送道路の耐震対策として橋脚の補強を行う橋梁耐震補強事業にも取り組む予定だ」
―次は河川事業を。
「04年度から進めてきた船津川災害復旧事業については、堤防、護岸、河床掘削は概成しており、残る汐見地区の堤防嵩上げ、内頭川排水機場の遠隔操作などの工事を進める予定でいる。また、管内の河川堆積土砂の撤去については、地域の方々の関心が高く、計画的な撤去が望まれているが、豪雨などにより土砂の堆積状況などが変化することから、計画的に撤去を実施することは困難となっている。このため、河川堆積土砂の状況やその撤去箇所について、分かりやすく示すことが特に重要と考えており、撤去箇所の優先度や実施方法の考え方を基に選定した実施候補箇所などを対象に、市町と共有できる『河川堆積土砂撤去の分かりやすい仕組み』をつくる予定だ」
―砂防事業は。
「砂防事業では、尾鷲市の向山谷川、紀北町の白越谷川などで工事を継続し、紀北町の楠木谷川で新たに工事着手する予定でいる。急傾斜地崩壊対策事業では、尾鷲市の九鬼地区、中井浦2地区、紀北町の長島地区で工事を継続し、紀北町の引本浦第一地区で新たに工事に着手する考えだ」
「長島地区の急傾斜地崩壊対策事業は、直高約60b、法長約80bの斜面を現場打法枠工とロックボルトまたはアンカー工で補強していく近年にない大規模工事で、安全対策などに十分注意しながら工事を進めている」
「また、従来のハード対策に加えて、警戒避難体制の整備など土砂災害防止のためのソフト対策の推進を図るため、土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域および土砂災害特別警戒区域の指定にも重点的に取り組む予定だ」
―最後に海岸事業について聞きたい。
「海岸事業では、長島港海岸の呼崎・名倉地区などで堤防を嵩上げする高潮対策事業を進める。長島港では、地震・津波への緊急対応として陸閘(りっこう)の動力化を進めており、全体計画15基のうち12年度に5基が完成し、現在6基が工事中である。継続して残る4基に着手し、当面の整備を完成させる考えだ」