不調の要因の一つである資材価格高騰の現状について深松氏は、生コンクリートを例に次のように話す。
「仙台地区は生コン業界の競争がもともと激しく、一時期、日本で一番安いと言われた。しかし、現在の設計単価は、実勢価格と1立方b当たり約2000円の差がある。海岸の防潮堤工事などで5000立方bも使えば、差額は1000万円にも膨らむ」
資材価格の上昇の要因は何か。業界内では、急激な需要増に対する輸送能力不足の影響が大きいとする見方が有力だ。東北地方整備局と東北6県・仙台市、建設・資材関係団体で組織する建設資材対策東北地方連絡会が1月末に開かれ、関係者の情報交換を通じて、輸送能力不足の問題が浮かび上がった。
連絡会の中で、アスファルト合材や生コンクリートなどの資材メーカー側は、供給能力は十分にあるが、輸送手段であるダンプトラックやミキサー車が不足していると説明した。
施工者側からは、アスファルト合材や生コンが入手しづらい実態や、現場によって価格差が生じていることが報告された。そして、工事量の増加によって今後ますます価格が上昇するのではないかと懸念する声が上がった。
ある砕石業者は「震災直後の応急復旧のために青森県から呼んだダンプトラックをいまだにかえせず、青森では除雪用のダンプが足りなくなっている」と話した。
輸送能力をめぐっては今後、車両の不足に加え、別の問題が地域によって深刻化してくる可能性がある。復旧・復興工事の集中に伴う激しい道路の交通渋滞の影響だ。
宮城県北部沿岸地域の石巻市や南三陸町、気仙沼市の道路交通は国道45号への依存度が高い。これまでに超大型JV事業として発注されたがれき処分では、仮設焼却炉やリサイクルプラントの建設など準備工事が進められている。本格的な処理作業は5月のゴールデンウィーク明けからスタートする。
「がれき処理に防潮堤、河川堤防の復旧工事などが重なり、1000台以上のダンプが1本の国道に集中する。そうなれば、いまでも渋滞している道路が絶対に動かなくなる」。深松氏はそう断言する。「1日に走行できる回数が半分になるかもしれない。その結果、予想もできない新たな課題が生まれる恐れがある。それなのに、この問題についてはまだまったく話し合われていない」と危機感を隠さない。
(取材協力 建設トップランナー倶楽部幹事会、建設新聞社・宮城)
露呈した課題 不十分な輸送能力
2012年3月9日建通ネットワーク
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