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祝・横浜市公共建築100周年<7月号>

横浜ファンを拡大せよ−。

Congratulations on the 100th anniversary of Yokohama City Public building division.
Please enjoy more information for Yokohama lovers.
 
今から100年前、1922年4月1日。横浜市の行政組織に建築営繕事務を行う「建築課」が誕生した。以来、市民が利用する文化施設やコミュニティ施設、社会福祉施設、514の学校、109の市営住宅、病院、庁舎、焼却工場などを整備し、現在は約2600施設を保有するまでに至った。
建通新聞では2022年5月から23年3月まで、月替わりの連載で横浜市の公共建築の歴史を振り返るとともに、建設や維持保全に携わる技術者を紹介する。
そこにあって当たり前の公共建築とは。
技術者から見た推し≠フ建物は。
あまり表には出てこない、公共建築に携わる人の思いとは―。
(2022年7月1日更新)
 
As many as one hundred years have passed since the public building division was established in Yokohama City Government on April 1, 1922.
About 2600 buildings have been constructed, such as city halls, community centers, social welfare facilities, 514 schools, 109 public housing, hospitals, incineration plants, and that made our lives so convenient, comfortable and smooth.
Now, let's focus on those involved in technology, who made the buildings and have been taking care of them ever since, and think over the meaning of public buildings.
(As of July 1, 2022)
 

1・横浜市公共建築の紹介 This is The Public Building

横浜市公共建築の紹介3回目は、横浜市開港記念会館と赤レンガ倉庫を見る。どちらも重厚で高貴な印象を与える歴史的建造物だ。横浜市はこれらの建造物を飾り物≠ニしてではなく市民に広く利用してもらうため、建物の風合いを損なわず現代のニーズに合わせた改修を実現した。
 
Let's get closer to Yokohama Kaiko Kinen Kaikan(The Yokohama City Opening Memorial Hall) and Akarenga Soko(the Red Brick Warehouse). Both are historical buildings that give a stately and noble impression.The City of Yokohama decided to renovate them for public use rather than as decorative objects. See how it meet modern needs without losing the texture of the buildings.
 

◆横浜市開港記念会館(国指定重要文化財)
Kaiko Kinen Kaikan/The Yokohama Port Opening Memorial Hall

横浜市開港記念会館(写真提供・横浜市中区地域振興課)
 
 
度重なる復元や改修を経て、現在も保存改修工事を重ねている横浜市開港記念会館は、「いいものをつくってきちんと手入れして、長く大切に使う」というストック社会のサンプルでもある。
同会館は、横浜開港50周年を記念し横浜市民からの寄付を募り建設された記念建造物。設計は、1913年にコンペで当選した東京市の技師、福田重義氏の案を生かし、長崎市から招かれた山田七五郎氏を中心に、後に横浜市建築課を形成するスタッフが担当した。山田氏はその後、初代の横浜市建築課長となる。施工は清水組(現・清水建設)。17年6月30日に竣工し、翌7月1日に「開港記念横浜会館」として開館した。
23年に発生した関東大震災では、躯体の損傷こそなかったものの建物内部を焼失し、27年に復旧。戦後は米軍接収が解除された後、ドーム屋根の復元や内部改修が行われた。89年には大正時代の姿に復元され、国の重要文化財の指定を受けた。
それから10年たった99年4月。建物のエントランスホール天井のしっくいが、約2畳の範囲で剥落するという事故が発生した。幸いけが人はなかったが、横浜市は他にも経年劣化箇所がないか調べることとし、庁舎施設課第二係長に就任したばかりの秋山雅英氏(現・ハマツーウェイ建設部部長代行)らが調査に当たった。庁舎施設課長は、同じく就任したばかりの小林一美氏(2022年3月まで横浜市副市長)だ。調査の結果、老朽化対策の改修を行うことを決めた。
 

重要文化財の価値を損なわずに改修

しかし、重要文化財の指定を受けた建物を改修するには、文化財指定当時の仕様・材料に戻すことが条件になる。大幅な制限が伴い、多額の費用も掛かる。横浜市は元施工の清水建設が保有していた同会館建設時の資料を基に、文化財建造物保存技術協会(文建協)の高村功一氏らに詳細な調査を依頼し、重要文化財としての価値を損なわない改修方法の検討を始めた。改修設計を委託した先は横浜市建築設計協同組合(YSK)。地元・横浜市の設計者集団だ。
YSKからは、建物外部の設計を金子設計、内部を像建築設計事務所が、設備設計は日本設備設計、日本環境設計が担当した。秋山氏ら改修担当チームは、建物各所の材料を調べ上げ、木摺り下地のしっくいは日高産の角又(つのまた)を混ぜたものであることや、プロセニアム・アーチの塗装成分割合などを突き止めた。外壁調査では景観を守るため、建物全体ではなく壁の一面ずつ足場を架けてれんがの打音調査。高秀秀信市長(当時)らの尽力により文化庁から国費の導入も図り、清水建設による改修工事が始まった。
天井としっくい塗りを補修し、空調や電気などの設備を全面改修。裏門から中庭を通りエレベーターに続く動線をバリアフリー化した。エレベーターシャフトは外観と調和させるため透明のガラス張り。れんがの壁は、鉄板を挟み込む碇聯(ていれん)鉄構法(a hoop-iron construction)を踏襲して補強した。外壁タイルは、建設時に残してあったタイルを見本に新しいタイルを何度も焼いて色合わせを行い、調達した。
そして、無事に補修が完了した後は、建物の劣化状況や補修工法、手順、使用材料などの工事履歴を「補修シート」としてまとめ、次の改修のための申し送りとした。
その後09〜10年にも外壁の補修や講堂内部の改修を行ったが、復元から約30年が経った屋根ドーム群は、大雨が降るとひどい雨漏りがする。市は21年12月、施設の保存の補修工事に着手した。施工は清水建設。24年3月にリニューアルオープンする。
 
Yokohama City Kaiko Kinen Kaikan(The Yokohama Port Opening Memorial Hall, National important cultural properties), is a sample of a stock society in which good things are made, properly cared for, and used carefully for a long time. It has undergone repeated restorations and renovations, and now in process of another renovation work to preserve and make it more attractive.
It was built in 1917 as a memorial project of the 50th anniversary of opening of Yokohama Port. This building's construction is a mixture of red brick and granite in the Tatsuno free classic style. It has a clock tower, affectionately known as "Jack", on its southeast corner, an octagonal dome on its southwest corner, and a rectangular dome on its northwest corner. The interior of the building was destroyed in the Great Kanto Earthquake, but was restored with the addition of reinforced concrete pillars and beams. The building came to its current condition after the restoration of the roof in 1988.
Sorry, this building is now closed till March 2024 for renovation work.
 
メインホール(写真上)の定員は最大481人。
館内の案内は会員約100人のジャックサポーターズが担当する(写真下)
 
 

横浜市開港記念会館のボランティアガイド、「ジャックサポーターズ」の事務局長・粱根操(あわね・みさお)氏に話を聞いた

私は関西出身ですが、会社勤めは退社するまで埼玉県でした。海のある横浜が好きで、リタイヤにあわせ移住してきました。横浜をもっと知りたくてジャックサポーターズの募集に応募し、もう10年以上、全国から訪れる人々に館内をご案内しています。館内の素敵な雰囲気の中、結婚式の前撮りやテレビドラマの撮影などがよく行われています。
横浜市開港記念会館の「豆知識」は18ほどあります。一部を紹介すると、
 
・2階広間のステンドグラスは三面(箱根越え、鳳凰、呉越同舟)総数で2046ピースあり、横浜開港記念150周年の修復時に1枚だけ超音波洗浄せずに残してある。
・時計塔の階段は全部で117段。時刻案内の電話番号と同じなのは、偶然なのか。
 
どうですか。気になりませんか。工事が終わり再オープンしたら、ぜひ、実際に見に来てください。
 
横浜市開港記念会館のボランティアガイド「ジャックサポーターズ」によるオンライン館内ガイドツアーはこちら。
Enjoy guided tour by JACK SUPPORTERS VOLUNTEER GUIDE online.
 ↓
館内バーチャルツアー・ガイドツアー 横浜市中区 (yokohama.lg.jp)
 
横浜市開港記念会館
▽所在地 横浜市中区本町1丁目6
▽れんが・鉄筋コンクリート造地下1階地上2階建て塔屋付き延べ4425平方b。
▽外壁は腰石まで花崗岩積み、1・2階は赤い化粧煉瓦と白い花崗岩を積み上げた辰野式フリークラシックスタイル
▽シンボルである時計塔「ジャック」の高さは約36b
※改修工事のため2024年3月まで閉館しています 
 
 

◆赤レンガ倉庫 Akarenga Soko/Yokohama Red Brick Warehouse

赤レンガ倉庫は、1号倉庫(1913年完成)と2号倉庫(11年完成)の2棟で構成する。歴史的建造物として、そして文化施設・商業施設としての二つの顔を併せ持つ建築物だ。
 
みなとみらい21新港地区に建つ
 
 
赤レンガ倉庫は、大蔵省(当時)が建設した最先端の官製倉庫。横浜港で荷揚げされた貴重な物品などを保管していたが、荷揚げ量の減少などから89年に使用を止めた。
横浜市は80年代から赤レンガ倉庫をどう活用するかを検討し、市で活用するに当たり、整備のコンセプトを「港の賑わいと文化を創造する空間」と決めた。歴史的建造物としての価値を損なうことなく、現代の商業・文化施設として改修することにし、92年に赤レンガ倉庫の建物と土地を国から取得した。
当時、港湾局臨海事業部赤レンガ倉庫等担当係長として改修に携わった恵美須望氏(現・馬淵建設建設事業本部顧問)は、「人が何度でも訪れたくなる空間や施設の整備を目指した」と話す。
しかし、明治末から大正初期に建築された建物を、現代の基準に適合させ、利用者や事業者が使いやすい建物に改修するのは、簡単なことではない。
そのままでは耐震性が不足している。水道、電気、空調設備がない。さらに外壁は落書きだらけ。文化施設や商業施設として活用するには課題が山積する。
 
(上・横浜市港湾局提供)閉鎖されている間に落書きされた倉庫。
港湾局が声がけして集まった市民らが落書きを消す作業を手伝った
(下・左/横浜市港湾局提供)改修で使用する新しいれんがは墨汁に漬け、古いれんがの風合いを出した
(下・中央)物品を盗難と火災から守るため、倉庫の入り口は狭く、窓はガラス窓、鉄格子、鉄扉の三重構造になっている。内側から簡単に開け閉めができ、利便性が高い。右が建築当初の、左は現在の鉄格子。違いが分かるだろうか
(下・右)明治時代の石畳の舗装が現在も残されている。敷石の厚さは15〜20センチ。現在の敷石の約2倍
 
 
保存・活用のための改修工事は93〜2002年にかけて実施した。課題をどう解決していったのか。
まず、保存のための改修工事では、旧階段室部分を耐震のコア(核)とすることで建物の内観や外観を極力変えない補強方法を採用した。次に、新たな活用のための改修工事では、集客施設としての通路や設備などを設置するため、既存の壁や床の各所に新たな開口部を設けた。これにより、さらなる補強が必要となった。新たな開口部廻りで鉄骨補強を行うとともに、れんが壁全体の目地にエポキシ樹脂を注入する方法でれんが壁自体の強度を高める方法を採用した。
次に電源や熱源、給排水設備の整備。赤レンガ倉庫の景観への影響を避けるために、供給設備棟は1号倉庫の裏側に地下式で設置して、二つの倉庫へつなぐ共同溝でエネルギーを供給した。
エスカレーターやエレベーターなどの大型設備は、通常の工事では屋根を架ける前に、上部からクレーンで搬入する。しかし、既に屋根の改修工事が終了した赤レンガ倉庫の屋根を開けるわけにはいかない。狭い入り口から部品を小分けにして建物内に持ち込み、組み立てた。
恵美須氏は「随所に歴史的建築物のリニューアル工事の難しさがあったが、竹中工務店の技術者らとともに、どうすれば課題を解決できるか、考えに考えて、予定したオープンに間に合わせることができた」と振り返る。
 
 
2号倉庫(左)と1号倉庫(右)
広場はフラワーガーデンやクリスマスマーケットなどの会場として活用されている
 
 
改修が終わった2002年。リニューアルオープンした営業1年目の来館者数は800万人に上った。
赤レンガ倉庫の周辺には、店舗をアピールするのぼりや看板がない。その分、倉庫の存在が際立つ。入居する商業テナントの事業者の間には、「赤レンガ倉庫が主役だから、テナントが目立つようなことはしない」との共通の認識があり、それが守られているという。
赤レンガ倉庫は、往年の姿のまま、現代の商業施設・文化施設として生き続けている。
 
Akarenga Soko, Yokohama Red Brick Warehouse was a state-of-the-art government warehouse built by the then Ministry of Finance. It was used to store valuable goods unloaded at the Port of Yokohama.
But its use ceased in 1989 due to a decrease of cargo.
Since the 1980s, the City of Yokohama has been considering how to utilize Akarenga Soko. Then the city decided to utilize it on the concept of "a space that creates the liveliness and culture of the port" for future development. Then city started to renovate the Akarenga Soko as a modern commercial and cultural facility without compromising its value as a historical building, and acquired the building and land of red brick warehouse from the national government in 1992.
 
赤レンガ倉庫
▽所在地 中区新港1丁目1-1
▽1号倉庫―組積造、鉄骨造3階延べ5479平方b、2号倉庫―組積造、鉄骨造3階延べ1万0755平方b
※設備メンテナンスのため2022年12月まで閉館しています 
 
 

2-1・公共建築に携わる横浜市職員の紹介 Technology persons of Yokohama city

◆横浜市建築局公共建築部保全推進課
Security Promotion Section of Public building division Yokohama city

庁舎、市立学校施設などの長寿命化対策事業、保全に関する技術支援、省エネルギー化推進業務、設備管理などに係る総合調整、電気事業法による電気工作物保安業務、設備管理などに係る総合調整を担当。
 
公共建築部保全推進課
 
 
氏名 Name推し≠フ公共建築またはひとこと My favourite Public building or message for you)
 
菅野和広(かんの・かずひろ) 新市庁舎。優れた環境性能を持つ超高層ビルで、横浜市の公共建築物で初めてZEB Readyの認証を取得しています。2階のデッキや3階市民ラウンジからのみなとみらいの夜景もおすすめです。
 
松下由佳(まつした・ゆか) 横浜市民ギャラリー。用途変更の改修以来、絵画のグループ展でほぼ毎年、使わせていただいています。少し駅から遠いですが、吹き抜けもあって開放感があり、設備も整っていて居心地がいいです。楽しい思い出を積み重ねています。
 
石典明(たかいし・のりあき) 日野こもれび納骨堂。市内初の自動搬送式納骨機械を設置した施設であり、設計から施工まで携わらせていただきました。開放性のある意匠もさることながら、地下空間を有効活用するなど省スペース化を実現する施設となっています。
 
鈴木達典(すずき・たつのり) 神奈川県庁本庁舎。重厚で横浜を代表する公共建築である。高校生の時に関内にある文房具店で配達のバイトを行っていた時に出入りしていたことや横浜市に就職後も県との協議でよく訪れていたこともあり非常になじみ深い建築物である。
 
浅原徹(あさはら・とおる) 中央図書館。以前は定期的に読書と本を借りに通っていました。現在は業務で頻繁に出入りしており、公私共にお世話になっている施設です。六角形のブロック構造と大きな柱の開放的なエントランスが特徴的な建物です。
 
宇田武(うだ・たけし) 鶴見工場。入庁して最初に配属された職場です。臨海部に立地しており、見学者通路にもなっていますが管理棟から工場棟までをつなぐ渡り廊下から望める海とつばさ橋の景色が良いです。
 
松田豊(まつだ・ゆたか) 都筑区総合庁舎。積み木を積み上げたような個性的な外観に丸い開口部と高いアンテナ塔の組み合わせがシンボリックで気に入っています。見る方向により印象が変わる面白さもあります。居住区ということもありイチ推しです。
 
吉田美登里(よしだ・みどり) 日産スタジアム。サッカーやコンサート等のイベントがあります。1階にはスポーツセンター医科学センターがあり、運動できたりいろいろな教室も開催しています。ぜひチェックしてみてください。
 
平岩悠里(ひらいわ・ゆうり) 横浜スタジアム(横浜公園)。横浜DeNAベイスターズのホームであり、高校野球やライブにも使用される最高のスタジアムです。選手を近くで見れる席もいいですが、新しくできたウイング席はスタジアム全体を見渡せて風も気持ちよくてお勧めです!
 
大澤涼介(おおさわ・りょうすけ) 城山ずい道。道志川の水を横浜まで送るため大正3年に設置された管路隧道で、当時日本で2番目に長いトンネルでした。「近代化産業遺産」に認定されている水道4施設のうちのひとつです。
 
布川肇(ぬのかわ・はじめ) 横浜武道館。サブアリーナが2020年7月に開館し、横浜市の公共施設初の本格的な武道場を持つ施設になります。見学会の企画をして何度も訪れる中で、建物の機能性やデザインに魅力を感じるようになりました。
 
坂本健治(さかもと・けんじ) 横浜スタジアム(横浜公園)。グラウンドに立つと、都会の真ん中にこんな広い空があるのかという解放感、気持ちよさと不思議さの両方を感じます。
 
田原次郎(たはら・じろう) 開港資料館。地味な印象ですが、当地は1854年に日米和親条約が締結された場所で、旧館は1931年に建てられた旧英国総領事館です。中庭にある「たまくすの木」は条約締結の時からあったとか。歴史を感じられる施設です。
 
青木透(あおき・とおる) 根岸なつかし公園旧柳下邸。まもなく築100年の歴史的建築物ですが、現役の公共建築物でもあります。現代の設備が見えてしまうと雰囲気が壊れるので巧妙に隠されています。襖を開けると分電盤が出てくるなどの工夫が面白いです。
 
中村謙次郎(なかむら・けんじろう) 大倉山記念館。内部は、演奏会や絵画の展覧会に利用されています。内部に入ると歴史の重みが感じられタイムスリップして昔に戻った感じのする楽しさがあります。周囲の庭からの近景も楽しめます。
 
秋山和彦(あきやま・かずひこ) 横浜へリポート。電気主任として担当している施設です。晴れていれば屋上からは、三浦半島から房総半島までの絶景が望め、運がいいとヘリコプターの離発着まで見ることができます。
 
油座チセノ(ゆざ・ちせの) 旧円通寺客殿(旧木村家住宅主家)。金沢八景権現山公園にある茅葺きの復元建物。公園は2022年4月に開園した新しい施設です。春は満開の桜とのコラボがきれいでした。
 
網本豊信(あみもと・とよのぶ) 金沢プール。温水プールやレストランから東京湾が望めて開放的な気分になれます。基本構想から工事監理まで携わった思い出深い施設です。
 
高橋衛(たかはし・まもる) 希望が丘地区センター。地区センターは横浜市を代表する地域の住民のための施設で、1973(昭和48)年に整備基本構想が策定され、同年、第1館目の施設として開館しました。既存施設からの転換、増築、再整備等を重ねていますがモダニズム風の面影が今も残っています。
 
S.Iwabuchi(えす・いわぶち) 横浜国際プール。広い広場と半円形の階段を過ぎ、正面玄関方向で大きな方立のカーテンウォールと打放しコンクリートの壁に包まれる。右手奥には一転無機質なコンクリート。青いガラスのカーテンウォールに緩い曲線の金属屋根が周囲の植栽とマッチしたファサードが現れる。
 
三宅俊平(みやけ・しゅんぺい) 大さん橋国際客船ターミナル。入庁式で初めて行った思い出があります。近代的な外観ですが、昔ながらの港町にもマッチしている不思議な建築だと思います。
 
 

2-2・公共建築に携わる民間技術者の紹介 Technology persons

横浜市開港記念会館保存修理工事報告書
 
 

◆金子設計(横浜市磯子区)

代表取締役会長 金子修司(かねこ・しゅうじ)
代表取締役所長 稲毛恒男(いなげ・つねお)
理事設計室次長 竹島比佐子(たけしま・ひさこ)
横浜市開港記念会館外部の改修設計を担当
 
横浜市開港記念会館の改修設計―。
なぜその工事が必要なのか。
それはベストの選択肢なのか。
他の方法はないのか。
改修提案の一つ一つを吟味し、選りすぐりの、唯一無二の策をもって取り組むのが、重要文化財の改修設計だった。
 
当設計事務所で重要文化財の改修設計を手掛けるのは、これが初めて。文化庁から「創建時と同じ材料を使う、同じように戻す」というオーダーのもと、文化財建造物保存技術協会の高村功一氏をはじめ横浜市教育委員会、建築局のメンバーらとともに考えをめぐらせ、意見を交わし、議論した。時にはバーベキューを楽しみながらコミュニケーションを深め、一致団結して取り組んだ。
 

重要文化財をバリアフリー化する

重要文化財にエレベーターやスロープを設置する設計はやったことがない。建物内は段差が多く、エレベーターを据える着床部分は低くて床の仕上げ面は高い。
そこで、タイルを保護しながら床高さをそろえるため木製の下地をつくり、エレベーターの着床を調整した。
出入り口の沓摺(くつずり)も車いす移動の支障になるが、沓摺を削るのは重要文化財を傷つけることになる。
さて、どうするか。
よくよく見ると、沓摺の中央部分がやや平らになっている。人が通っているうちに自然にすり減り、なめらかで平らになっている。そうだ、沓摺をすり減らして℃ヤいすでも通れるようにしよう。
困難の解決策を考え続けていると、さまざまな知恵が出てくるようになった。
しっくいの材料の産地まで探しているうちに、作業がどんどん面白くなってきた。
英知を生かすことが、古いものを守り、生かすことにつながると実感した。
考えて工夫することが好きな人や、建築を良くしようという人が集まったからこそ、改修が成功したと思う。
古いものに触れる面白さを味わわせてもらった大切な経験だった。
 
もう一つ大切なことは、工事の一部始終を記録にとどめ、後に残すこと。
横浜市教育委員会が編さんした「重要文化財 横浜市開港記念会館保存修理工事報告書」は、次の補修のための申し送り事項であり、英知を閉じ込めたタイムカプセルだ。
未来の技術者諸君に、活用してほしい。
 
 

◆竹中工務店 設計本部 アドバンストデザイン部伝統建築グループ
シニアチーフエキスパート

中嶋徹(なかじま・とおる)
Toru Nakajima
TAKENAKA CORPORATION Tokyo
Senior Chief Expert, Traditional Architecture Group, Advanced Design Department
 
 
竹中工務店設計本部 中嶋シニアチーフエキスパート
 
 
赤レンガ倉庫の改修に1994年から2002年までの9年間携わりました。
貴重な物品を保管する赤レンガ倉庫は、海外への玄関口で皇族の方も利用していた新港ふ頭に、保税倉庫として建設されたものです。市民の憧れの的だった赤レンガ倉庫の歴史を市職員など多くの人たちに教えていただき、今後、長く市民に利用してもらうために改修する仕事は、その後の私の仕事の方向性を決めるものでした。
 

使い続けられる赤レンガ倉庫を目指して

私は、建物を保存するとは、使い続けることだと考えています。20年間、建物を保存するというのは、20年間、建物を使い続けられるように運営することです。
赤レンガ倉庫をにぎわいのある商業・文化施設にするという改修方針のもと、どのような機能が必要かを考え、さまざまな工夫が必要です。
レンガ組積造は窓や入り口など開口部が少なく、内と外とが遮断されています。そこで、テラスをガラス張りにして、中からは外へ、外からは中へ人々が滲み出るようにし、少しだけ一体感が増す仕組みになっています。
また、長細い建物で廊下が多く必要でテナントのスペースが狭くなるので、本来は建物の内部に設置する電源・熱源施設を、建物の敷地外の地下に設けています。
 

職人の技術を残す

変えたものがある一方、変えなかった部分もあります。私は、赤レンガ倉庫の改修現場で触れた、建設当時の職人の技術を残したいと思いました。
例えば、当時のれんがは手作りで一つひとつの大きさが微妙に違います。大きさが均一ではないれんがを全て利用して、どのように積み重ねるかがれんが職人の腕の見せどころ。同一規格のれんがを大量生産できる今では見られなくなった技術です。ばらつきのあるれんがを出来るだけ無駄にせず、全てを収まるべきちょうど良い場所に収め、建築物を作り上げる。こうした職人の技術を見て、これを伝えていきたいと思いました。
 

技術者の地位向上を

今回の仕事には最初、竹中工務店の職員が2〜3人、職人50〜70人が入場し、最終的には竹中の職員が10人ほど、職人は300〜400人になりました。
ここには、赤レンガ倉庫で仕事をしたいという職人らが集まりましたから、コミュニケーションが活発でした。その中で独自の技術を互いに教えあい、技能を高めあうことができました。みんな、歴史的建造物を改修していることへの誇りがあると、私は感じました。
文化財の改修には、高い技能が必要になります。その力量がある技能者が適正に評価され、社会的地位の向上や安定した生活基盤の確保につながればと思っています。
 

建物が社会で果たす役割

歴史的建造物の改修には、時間と手間が掛かりますが、いくら掛けても良いというわけではなく、コストバランスも重要です。改修は適正な期間、費用で進めなくてはいけません。赤字の仕事では次の仕事につながらないからです。
伝統建築の仕事をしている中で、新築工事の仕事と比べるとその意味はどこにあるのだろうか、将来もこの仕事を続けていくことになるのだろうかと思いをめぐらすことがありました。
今は、こう考えています。
建物を建てるとか、改修するとかを超えて、建物を皆さんに使い続けてもらえるようにすることが、私の仕事なのだ、と。
使い続けてもらうためには、利用者のニーズに応える建物でなくてはいけませんし、将来、建物がどういう扱われ方をするかを想像することも必要になります。建物が社会の中でどのような役割を果たすか。それを考えることが大切なのです。
 
 

3・歴代建築局長ご挨拶 Directors of Public building division Yokohama City

 
黒田浩(くろだ・ひろし) 元建築局長(2019〜20年度)
Hiroshi Kuroda Former-director of Public building division Yokohama City (2019-20)
(@入庁年次 SinceA現在の所属B"推し"の公共建築 My favourite Public buildings、ひとこと message for you)
@1983年度入庁 Since 1983A公益財団法人横浜市建築保全公社 理事長B旧金沢区総合庁舎。1983年に横浜市に入って初めての職場が金沢区建築課でした。既に建て替えられましたが、当時の区役所は槇文彦先生設計の総合庁舎で、南西側角の入り口や、2階レベルの中庭に面した公会堂のファサードが印象的でした。
 

ご挨拶

現場を担当したことはないのですが、1992年から3年間、企画管理課(現在の営繕企画課)の職員でした。当時、企画管理課では、各局からの施設建設の相談に対して基本構想的なスタディを行っていましたが、そこで盛り込んだアイデアが、実際に作られた施設で使われていたことがあり、とてもうれしかった記憶があります。
入庁時、初めての職場と、退職時の職場の建物の両方が、槇文彦先生の設計だったことを、少し自慢に思っています。
 
 
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6月号 横浜市新市庁舎、横浜市建築局営繕企画課、鈴木和宏前建築局長
5月号 横浜市庁舎の変遷、横浜市建築局「未来プロジェクトチーム」、鵜澤聡明建築局長
 
  

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