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祝・横浜市公共建築100周年<9月号>

横浜ファンを拡大せよ−。

Congratulations on the 100th anniversary of Yokohama City Public building division.
Please enjoy more information for Yokohama lovers.
 
今から100年前、1922年4月1日。横浜市の行政組織に建築営繕事務を行う「建築課」が誕生した。以来、市民が利用する文化施設やコミュニティ施設、社会福祉施設、514の学校、109の市営住宅、病院、庁舎、焼却工場などを整備し、現在は約2600施設を保有するまでに至った。
建通新聞では2022年5月から23年3月まで、月替わりの連載で横浜市の公共建築の歴史を振り返るとともに、建設や維持保全に携わる技術者を紹介する。
そこにあって当たり前の公共建築とは。
技術者から見た推し≠フ建物は。
あまり表には出てこない、公共建築に携わる人の思いとは―。
(2022年9月1日更新)
 
As many as one hundred years have passed since the public building division was established in Yokohama City Government on April 1, 1922.
About 2600 buildings have been constructed, such as city halls, community centers, social welfare facilities, 514 schools, 109 public housing, hospitals, incineration plants, and that made our lives so convenient, comfortable and smooth.
Now, let's focus on those involved in technology, who made the buildings and have been taking care of them ever since, and think over the meaning of public buildings.
(As of Sept. 1, 2022)
 
 

1・横浜市公共建築の紹介 This is The Public Building

横浜市公共建築の紹介5回目は、「横浜マリンタワー」。

◆横浜マリンタワー YOKOHAMA MARINE TOWER

 
横浜マリンタワー
リニューアルを終えた横浜マリンタワー(写真提供・横浜市文化観光局 撮影・須藤写真事務所)
 
 
横浜マリンタワーの建設は1958年、横浜港開港100周年記念事業の一環として、横浜市と民間から発議された。清水建設の設計・施工で59年12月に着工し、61年1月に完成したタワーは鉄骨造33階建てで高さが106b。低層部建物は鉄骨鉄筋コンクリート造4階建て。休憩所や海洋科学博物館などが整備され、多くの市民や観光客を集めた。運営会社は横浜展望塔。
 
Let's build our tower―。 To commemorate the 100th anniversary of the opening of the Port of Yokohama, The Yokohama Marine Tower was proposed in 1958 by the City of Yokohama and the private sector. 
Design and construction was awarded to Shimizu Corporation, that began in December 1959 and was completed in January 1961. The low-rise building is a four-story steel-framed reinforced concrete structure. The tower was equipped with a rest area and a marine science museum, attracting many citizens and tourists. 
 
 
横浜マリンタワーに関する文献を紹介する。
 
   *
円錐台状の基礎の上に構築された4階建て円形低層部の上に載る塔体は、外面が10角形となるように鉄骨を中央コアとで立体的に組み、風の透過性を考慮したトラス構造で2層の展望台まで細くすぼむ形状だ。黄赤と白7等分に塗り分けられている。
塔頂部には制振装置『スーパースロッシングダンパー』の水槽を並べ、台風・地震による揺れを抑えている。塔の総重量の0.3%にあたる量の水が必要で、設置場所により水槽サイズと台数が変わる。
2009年の全面改修では低層部に機械棟を増築し、エレベーターや階段を増設することで展望台へのアクセスなど利便性向上を図り、また耐震補強として展望台下部の一部に座屈補強としてブレース材を追加し、塔体の下部ではブレース材の取替えなどを行った。
外面は、高耐食性の塗装で銀色に変わり、内面はブラウンオリーブ色に塗替えられた。展望台は、一周20面の高遮熱性大型ガラスサッシで覆われ、360度を一望できる。
(文化庁「近代の文化遺産の保存と活用」より抜粋)
   *
 
1967年撮影
1967年撮影 (写真提供・横浜市文化観光局)
 
山手からの風景
山手からの風景 (写真提供・横浜市文化観光局)
 
1985年撮影
1985年撮影 (写真提供・横浜市文化観光局)
 
 
しかしその後、みなとみらい(MM)21地区の開発が進み市の都心機能がMM21に移ると、横浜マリンタワーの入場者数は減少し、2006年には一旦営業を休止するまでに追い込まれた。横浜市は07年に横浜マリンタワーを取得し、リストの運営で09年にリニューアルオープンした。それから10年。今回19年9月から22年3月まで2年半に渡る長寿命化工事を経て、9月1日、三度目のオープンを果たす。運営はリストプロパティーズと、ゼットン、ティケイスクエア、横浜エフエム放送の4者が担う。
 
However, when the Minato Mirai (MM) 21 area was developed and the city's urban functions were transferred to MM21, the number of visitors to the Marine Tower declined, and in 2006 the tower was forced to temporarily suspend its operations. In 07, the City of Yokohama acquired the tower, which was reopened in 09 under the management of a private operator List Co., Ltd. 
Ten years have passed since then, and now, after life-extending renovations from 19 to 22, the tower reopened for the third time in September as the "Yokohama Travel Library & Community Lounge. The operator is List. List Properties, a consolidated subsidiary, and the following four companies: Zetton, T・K SQUARE Co., Ltd., and Yokohama FM Broadcasting are collaborate.
 
 
新しい横浜マリンタワーのWebサイトはこちら For further information, click here
↓ 
https://www.marinetower.yokohama/
 
マリンタワー工事中
生まれ変わる横浜マリンタワー。緑豊かな空間を整備(8月3日撮影)
 
 
8月3日現在の横浜マリンタワーは、山下公園から続く豊かな緑の空間として外構整備が進められていた。
塔頂部にあった灯台は既に廃止され、東京タワーのような電波塔でもない横浜マリンタワー。周囲の高層ビルはタワーより高くそびえ立つ。横浜マリンタワーは今、みなとヨコハマのシンボルとして、人々に愛されるためにある。
 
The lighthouse at the top of the tower has been discontinued, and the Yokohama Marine Tower is not even a radio tower like the Tokyo Tower. The more, many skyscrapers in MinatoMirai area are higher than Yokohama Marine tower.
So the Yokohama Marine Tower is just a symbol of Yokohama now, just to be loved by the people in Yokohama.
Location: 14-1 Yamashita-cho, Naka-ku, Yokohama
 
 

2-1・公共建築に携わる職員の紹介 Technology persons of Yokohama city

◆横浜市建築局公共建築部施設整備課
Construction Preparation Division of Public building division Yokohama city

庁舎施設や市営住宅などの建築工事、土木工事の設計、工事監理を担当。
 
Responsible for design and construction supervision of building and civil engineering work for government facilities, municipal housing, etc.
 
横浜市建築局公共建築部 施設整備課さま
横浜市建築局公共建築部施設整備課
 
(氏名 Name 推し≠フ公共建築またはひとこと My favourite Public building or message for you)
 
波多野陽介(はたの・ようすけ) 横浜市開港記念会館。迷いましたがオーソドックスにこの施設で!以前、ここでイベントを企画した際、参加者から「海洋都市横浜の誇りとなる建物だから大切にしないといけないね」と言われたのが記憶に残っています。現職で改修に携わることができました。
 
川村洋介(かわむら・ようすけ) 三ツ沢球技場。今はなき横浜フリューゲルスファンであった私にとって、よく観戦をしに行った思い出深いスタジアムです。スタンドとピッチの距離が近く、選手同士の接触音や掛け声などが聞こえ、テレビ観戦では味わえない臨場感を感じることができる競技場です。
 
小松茂(こまつ・しげる) 旧市庁舎。入庁以来、旧市庁舎で働くことはなかったのですが、特にピアノ前のロビー空間はいろいろと思い出があり、私の中では貴重な心象風景として記憶されています。今後行政棟は保存されホテルとして保存利活用されると聞いています。楽しみです。
 
中村陽介(なかむら・ようすけ) 大倉山記念館。石造りの神殿のような外観のため、映画やドラマでもよく登場しています。内部にはホールや、集会所、ギャラリーなどがあり、ホールでは定期的に開催されるコンサートなどを楽しむことができます。
 
永山智文(ながやま・ともふみ) 横浜港大さん橋国際客船ターミナル。CMや映像の出現率はかなり高いです。遮るものがない大きな空と海を見渡せる屋上は、24時間無料で利用できます。2階のデッキにある手摺りは、船の着岸位置や扉の位置に合わせて倒すことができる仕組みになっています。
 
石土健太郎(いしづち・けんたろう) 旧市庁舎。入庁して最初に配属されたのが旧市庁舎でした。格式ある建物に初めて登庁した際にとても緊張した思い出があります。今後保存活用される後利用にもとても期待しています。
 
石橋きさら(いしばし・きさら) 横浜港大さん橋国際客船ターミナル。美しい景色を眺めながら屋上を散歩するのが最高に気持ちいい建物です。24時間利用できるので、行ってみるとさまざまな発見があるかもしれません。
 
大井薫(おおい・かおる) 横浜南部市場。市場施設から商業施設に用途変更した関連棟は「食の専門店街」として、どなたでもご利用いただける施設に生まれ変わっています。普段は入れない水産棟も不定期で開放イベントを開催しています。ぜひお越しください!
 
大野鉄太(おおの・てった) 横浜国際プール。小さい頃によく遊びに行っていた思い出のプールです。当時は完成したばかりで先進的なプールだと感動していました。プールだけではなくアリーナもあり、メインプールは冬に床を張ってバスケのプロリーグにも使用されています。
 
鹿窪聖太(かくぼ・せいた) 日産スタジアム。サッカーやコンサートなどで有名ですね。市役所内には整備などの事業で関われる方もいます。一度でいいからグラウンドの芝に立ってみたい……!!この気持ちわかる方いませんか。
 
叶幸雄(かのう・ゆきお) 保土ケ谷消防署。外壁は、暖色系の色をベースとし、消防署員の制服をイメージした紺を合せております。私が関連した事業です。
 
川端美穂(かわばた・みほ) 新市庁舎。採用面接に来た際、このビルで働きたい!と感動した思い出があります。涼しい時期は、大岡川沿い公開空地がおすすめです。アトリウムではいろいろなイベントも行われていますので機会があればぜひお越しください。
 
木村真三啓(きむら・まさひろ) 横浜国際総合競技場(日産スタジアム)。世界で初めて3大スポーツイベントといわれる「オリンピック競技大会」、「FIFAワールドカップ」、「ラグビーワールドカップ」の決勝戦の会場となったスタジアムです。
 
沓掛将太(くつかけ・しょうた) 横浜赤レンガ倉庫。私が高校生の時に初めて横浜に行きたいと思った建物です。当時、赤レンガを使った建物が衝撃だったのを今でも覚えています。大学進学で横浜に来た時に最初に見に行った公共建築物でもあります。海も近くて散歩にもおすすめです。
 
橋一貴(たかはし・かづき) 横浜赤レンガ倉庫。結婚式の前撮りをした、非常に印象深い場所です。みなとみらいの景色が一望できるスポットなので、お気に入りの散歩コースの一つでもあります。連日さまざまなイベントが企画されておりますので、機会があればぜひお越しください。
 
竹田莉沙(たけだ・りさ) 新市庁舎。新建築に掲載されているのを見て、素敵な建物だと思い、転職先として決意しました。
 
西尾亘司(にしお・こうじ) 横浜赤レンガ倉庫。幼少の頃によく見ていた某刑事ドラマのエンディングによく映っていたのが印象的で、よく見に行っていました。赤レンガ倉庫に行くと何だがドラマの主人公達のように目の前を走りたくなります!
 
丹羽正芳(にわ・まさよし) 旧円通寺客殿。全国でも珍しい駅近の茅葺屋根の建物です。横浜市の特定景観形成歴史的建造物に指定されており、園内の桜は是非ご鑑賞ください。
 
野本翔(のもと・しょう) 横浜南部市場。関連棟の改修工事に携わりました。飲食店、青果、鮮魚、精肉、駄菓子、漬物・・・様々な小売店が並んでおり、まさに市場!という活気が感じられます。お食事は食堂のボリュームいっぱいの日替り定食がオススメです!
 
細川幹子(ほそかわ・みきこ) 旧市庁舎。横浜スタジアムから聞こえる歓声を聞きながら仕事をしていた思い出があります。耐震補強として免振レトロフィットを採用しており、建設当時の外観を今もほぼ残している建物ですが、今後の跡地利用でどのように生まれ変わるか楽しみです。
 
宮木香那(みやき・かな) 港南区総合庁舎。建物西側には日射による熱負荷を抑えるスクリーンが設置されています。省エネでエコですね!ただ、曲線を描いているため、建築基準法の審査時に学生時代ぶりの三角関数と戦ったほろ苦い思い出があります。
 
宮田隼平(みやた・しゅんぺい) 横浜マリンタワー。地元(東北)の友人の結婚式が横浜マリンタワーで開かれ、その数年後に、改修工事を担当し、勝手に縁を感じています。実は横浜で唯一の「恋人の聖地」なんです!
 
三好千恵美(みよし・ちえみ) 新市庁舎。建設に携わり、思い入れが深い建物です。大岡川沿いの水辺空間で多くの人がくつろいでいる姿をみると嬉しくなります。
 
山本瑶子(やまもと・ようこ) ベーリック・ホール。大学入学当初、建物や家具のスケッチを行う課題があり、山手西洋館を全て巡りました。ベーリック・ホールは、手摺りの装飾や化粧張りの組天井など多彩な装飾がとても美しく、見どころがたくさんあります。
 
横畑友子(よこはた・ともこ) 旧伊藤博文金沢別邸。八景島を見渡す平潟湾の景色が素晴らしいです。きれいに復元された別荘の縁側からも、庭園のベンチからも、心地よい海風と美しい景色が楽しめます。
 
 

2-2・公共建築に携わる民間技術者の紹介 Technology persons

◆日建設計、日建設計コンストラクション・マネジメント


今回(2019年)の改修設計を担当した日建設計の小野ダイレクターと、日建設計コンストラクション・マネジメントの古川上席執行役員にメッセージを寄せてもらった。
 
横浜マリンタワーと、古川伸也氏・小野潤一郎氏
日建設計 エンジニアリング部門ダイレクター 小野潤一郎氏(右)
日建設計コンストラクション・マネジメント 上席執行役員 古川伸也氏
 
 

横浜港のシンボル「横浜マリンタワー」

開港150周年に向けて横浜マリンタワーの全面リニューアルを行った際に弊社が設計と監理を担当し、10年が経過した今回、更なる長寿命化に向けた改修の設計を行いました。
2009年のリニューアルでは、横浜が持つイメージである、歴史や異国情緒と創造性や先進性を併せ持つ文化を大切にし、横浜を象徴とするアイコンとして人々の心に刻まれるものであり続けることを目指して設計に取り組みました。また、民間事業者に施設の運営を委ねる事業スキームの中で、タワーがかつてのにぎわいを取り戻し、持続できる計画を企図しました。
約100bの高さにある展望部は、外装を全て更新し、展望窓は、建設当時の耐風圧計算やガラスの技術やコストの制約上小割の窓となっていたものを4倍の大型の窓にすることで、横浜ベイブリッジからみなとみらい21までの横浜のパノラマビューを楽しめるものにしています。大型の窓にするために、樹脂膜を挟み込んだ分厚い合わせガラスを用いています。鉄骨造の塔体部は、建設当時から十分な風荷重が見込まれ設計されていましたが、タワー全体として最上部にあたる展望部が大型ガラス設置により重量が大きくなったため、地震に対する影響が大きくなり、現行の建築基準法で求められる耐震性を確保するために、外観イメージを損なわないよう、展望台下部の一部に座屈補強としてブレース材を追加し、塔体の下部ではブレース材の取替えを行いました。
また、外部側を鉄骨の織り成す構造の美しさを表現するマリンタワーシルバー、内部側をブラウンオリーブの塗装に一新しました。タワーの基壇部は、窓が少ない従前の外装を取り巻くように同心円状に増築を行い、山下公園側は透明感のあるガラスシリンダーで包み込み、イメージを一新させています。
内部には、当時から残っている、山下清画伯による2面のガラスモザイク画「横浜の今昔」と、かつて世界一高い灯台としてギネスブックに載っていた灯火を鑑賞できるよう、吹き抜けを拡張してメインホールとして設えました。
19年から行った今回の改修は、塔体に長年塗り重ねられた塗膜を除去し、腐食が進行した部材の更新と高耐久の再塗装などを行いました。従来は10年程度のサイクルで再塗装が必要でしたが、今回の改修計画では20年程度の耐久性を期待しています。今後も更なる長寿命化を目指し、定期的に適切なメンテナンスを継続していくことが肝要かと思います。
施工にあたっては、塗膜剥離工事や新規の塗装の工事に伴う周辺への粉塵等の飛散を防ぐためのシート養生を完全に行わねばなりませんでした。しかしながらシートで完全に養生すると、強風時には風荷重による揺れの影響が懸念されました。これらの影響に関しても事前の検討を行い、万全に安全性を確保しました。また、施工範囲内が蒸し風呂のような作業環境になることや、地上からの昇降における作業者への負担などへの配慮など、安全・衛生面への気配りも欠かさず行い、無事完工を迎えることができました。
横浜マリンタワーがこれからも永く存続し、人々に愛され、横浜のシンボルとしてあり続けることを願ってやみません。
 

2019年の改修工事、難所は風・暑さ・昇り降り

・「風」対策は今後の課題
風速10b/時の風が吹くと、塔体上部は船のように揺れます。その時は晴れていても塔体部の長時間の工事は出来ません。今回は塔体部前面をシートで覆っていたので、通常時より受風面積が大きく、風に対して揺れやすい状態でした。
また、今回、塔体部からの落下防止用としてメッシュシートを、剥離塗料の飛散防止用として養生シートで塔体部を覆いましたが、強風時に何度かメッシュシートのつなぎ部が破れました。幸いシートの飛散は避けられましたが、工事中は風速を注意しての作業となりました。風を通すが、物は通さないシートがあれば作業環境は改善されると思います。
 
・「暑さ」で作業効率ダウン
塗装剥離工事現場は飛散防止のため、塔体部外周面と作業工区床天井面を養生シートで塞ぎます。作業現場は風が通らず、夏場は蒸し風呂のようになり、作業も検査も大変でした。
 
・一日に何度も「昇り降り」
仮設エレベーターを設けましたが、それまでは、塔体内の階段で昇り降りしていました。また、仮設エレベーターは作業階の下階まで。そこから作業現場までは外周足場の階段で何度も昇り降りしました。
 
・施工者と協議し工夫した点
塗装剥離する塔体部には外部足場を取り付けなければなりません。足場取付け箇所は、足場撤去後の塗装となります。撤去後に部分的に残る塗装箇所は安全上の問題もあり通常の塗装が出来ないので、現場で代替品を探し、耐久性・耐候性のあるシール状のパッチを採用しました。
 
  

日建設計 エンジニアリング部門 ダイレクター
小野潤一郎(おの・じゅんいちろう)

Junichiro Ono
Nikken Sekkei Ltd
Director, Engineering Division 
 
2009年当時は、改修設計の構造担当として東京タワーのデジタル放送対応の耐震補強なども参考に取り組みました。今回の改修は、構造の工事はほぼありませんでしたが、設計監理チーム全体のとりまとめ役として関わりました。
横浜マリンタワーに行ったら、耐震補強で追加された部材、建設当時には無かった部材を探してみてください。ほとんど外部からはわからないと思いますが、ヒントは部材の取り合い部にあります。
私は中学・高校時代を横浜市の南部で過ごし、改修前の横浜マリンタワーや氷川丸に家族や友だちと遊びに来ていました。山下公園のほぼ端に位置する横浜マリンタワー付近は、当時、ややさびれた感じを受けていましたが、今回の改修により来訪者が増えることを期待しています。
 

これから設計を志す方へ 

当初の改修を行った際、築50年以上経った横浜マリンタワーの設計図、施工写真などを確認し、現地を実際に確認したところ、当時からさまざまな工夫が施されて設計、施工されていたことがわかりました。現代の設計は効率化の追求などから手間のかかる「ものづくり」は敬遠されることがありますが、どんな設計であっても、過去の事例を調べること、温故知新の気持ちを大切に、過去から一歩先んじる工夫を取り入れられるよう取り組んでほしいと思います。
 

日建設計コンストラクション・マネジメント株式会社 上席執行役員
古川伸也(こがわ・しんや)

Shinya Kogawa
Nikken Sekkei Construction Management, Inc.
Senior Managing Director
 
2009年のリニューアルの計画が始まった当時は、日建設計の設計室長としてプロジェクトを取りまとめておりました。現在はグループのCM会社に移籍しており、今回の改修工事は、日建設計を支援する形で取り組みました。経験と技術の伝承です。
横浜マリンタワーの展望室には、床面の一部にアクリルと強化ガラスで構成された窓を設え、タワーの直下を恐る恐る眺められる仕掛けになっております。
ちょうどこのリニューアルプロジェクトが始まる06年頃に横浜に自宅を建て、移り住みましたので、現場には自宅から直接歩いて行きました。今でも、食事や買い物などをこの界隈ですることも多く、横浜マリンタワーのある風景が生活の一部になっています。
 

これから設計を志す方へ

今回のリニューアル工事はかなり特別な事例ですが、今後の社会はますます既存ストックを有効に活用し、長寿命化を図ることが求められていきます。更地に新築する企画力も当然ですが、今ある建物をしっかりと見極め、今の時代の要請に応えられるものにアップデートしていく技術を磨くことも大切です。歴史や街並みを継承しながら、新しい息吹も吹き込むアイデアを生み出す発想力も是非高めたいものです。
 

 

◆渡辺組


工事部次長 篠田隆信(しのだ・たかのぶ)
Takanobu Shinoda
Watanabegumi Co.,ltd.
Deputy manager, Construction Division
渡辺組工事部次長 篠田隆信氏
篠田工事部次長 (外観写真提供・横浜市文化観光局 撮影・須藤写真事務所/内部写真提供・渡辺組)
 
 
2009年に横浜マリンタワー改修工事の所長を務めました。私にとって入社して以来、一番の大型現場でした。1〜5階の建物増築工事を当社が、6階より上部のタワー塗装の部分塗り替えなどを清水建設さまが担当しました。
それから10年が経って、19年12月から再びタワー改修の所長を務めました。
 
タワーの工事は高所での作業なので、強風の影響を強く受けます。荷揚げや、作業中に資材を飛散させないよう細心の注意を払いました。
幸いだったのは、施工中に大きな自然災害が発生しなかったことです。例えば台風が来れば、仮設の安全対策を考えなくてはいけません。嵐の前に一旦解体し、再び組み立てる必要があり、大きく工期に影響します。幸いにも天候に恵まれ、無事故・無災害で無事に完遂できました。
 
工夫したのは、職人が仕事をしやすい作業環境の構築です。職人の移動や資材搬入のための仮設エレベーターにできるだけ低い位置から乗り込めるよう、工事期間中は停止している横浜マリンタワーのエレベーターシャフトの狭いスペースを活用し、仮設エレベーターの荷重13dを受けられる構台を設置しました。設計・監理の日建設計さまと相談しながら当社で計画し、4階より仮設エレベーターに乗り込めるようにしました。横浜市建築局さまにはこの変更の提案を受け入れていただき、作業がスムーズになり、現場が効率的に回るようになりました。
施工に当たりご指導頂きました日建設計さまや横浜市建築局さまに感謝します。
 
横浜マリンタワーの周辺は昔ながらの横浜の風景が残る場所です。建物は周辺の景色が変わると、その魅力も変わります。みなとみらい21地区がどんどんと整備されていく一方、横浜マリンタワーがこれからも古き良きまち並みのシンボルであり続けるようなまちづくりを期待しています。
 
私が考える建設業の魅力は、デジタル化が進み、形のない仕事が増えてきた中にあって、何もない場所に図面と格闘しながら、実際に建物を作り上げていくこと。設計というストーリーがあり、それをどのように形にしていくかを考える面白い仕事です。
ただ、厳しさは相当なものです。
 
横浜マリンタワー改修工事
▽所在地 横浜市中区山下町14-1
▽工事内容 塔体部の鉄部の劣化補修、展望部・塔体部・低層部の塗装改修、展望部・低層部の防水改修、内装の美装・更新など
▽設計・監理 日建設計
▽建築 渡辺組
▽電気設備 共栄社
▽昇降機設備 三菱電機ビルテクノサービス
▽空調衛生設備 日本工業所
▽工期 2019年9月〜22年3月
 
 

3・歴代建築局長ご挨拶 Directors of Public building division Yokohama City

鈴木伸哉氏
 
鈴木伸哉(すずき・のぶや) 元建築局長(2010〜11年度)、元横浜市副市長(12〜16年度)
Nobuya Suzuki Former-director of Public building division Yokohama City(2010-11), Vice mayor(12-16)
 
(@入庁年次 SinceA現在の所属B"推し"の公共建築 My favourite Public buildings、ひとこと message for you)
@1978年度入庁 Since 1978A鹿島横浜支店 顧問B旧市庁舎 村野藤吾先生(村野・森建築事務所)が設計した素晴らしい建物です。40年間勤めた役所人生と建物の歴史が重なっています。副市長の時に建物を保存するかどうか議論を重ねました。
 

ご挨拶

公共建築にはさまざまな役割があります。
一つは「人を育てる」ことだと思います。横浜市の職員や設計から施工に携わる建設業界の方々、市民の皆さんが、地域や社会の課題を、公共建築を通してどのように解決していくか、智慧を出し合って考えます。建物が完成するまでには苦労も多いのですが、だからこそ愛着がわき、大切に使うようになる。そうして完成した建物は「ここにしかないもの」ですから、市民の皆さんにも愛される。目指すのはこうした使いやすく、愛される「人が幸せになる公共建築」です。公共建築はシビックプライド(civic pride)のある人を育てる役割も担っています。
 
「社会課題解決への挑戦」も公共建築の役割の一つです。
解決すべき社会の課題は時代とともに変わっていきます。今は脱炭素に向け挑戦していかなければいけません。コストの問題から民間企業が取り組みづらいゼロカーボンの建物にも行政が率先して取り組み、事例をつくる。それを見て民間企業も考え、さらなる高みを目指していくのではないでしょうか。
脱炭素の取り組みで企業価値が決まります。それは行政も同じ。川崎市は新川崎にゼロカーボンの小学校を建設します。横浜市も危機感を持ち、日本のゼロカーボンを牽引していくよう挑戦してほしいと思います。
 
もう一つお伝えしたいのは、設計者を価格で選んではいけないということです。皆で公共建築をつくり上げるには、設計者に協力してもらい、議論を重ねる必要があります。私の課長時代は、特命随契にこだわって設計者を選定していました。今は簡易プロポーザルの手法などが採られています。先輩方から受け継いできた設計者選定の思いは、ずっと継承していってほしいと思っています。
 
良いものをつくるのには、
 
・流されてはいけない
・標準図にとらわれすぎない、思考を止めない
・苦労を楽しむ余裕を持つ
・スピード感を持つ
 
それが、「人が幸せになる公共建築」につながります。
…と、言うのは簡単ですけどね(笑)。
 
 
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8月号 パシフィコ横浜と横浜港大さん橋国際客船ターミナル、横浜市建築局施設整備課、坂和伸賢元建築局長
7月号 横浜市開港記念会館と赤レンガ倉庫、横浜市建築局公共建築部保全推進課、黒田浩元建築局長
6月号 横浜市新市庁舎、横浜市建築局営繕企画課、鈴木和宏前建築局長
5月号 横浜市庁舎の変遷、横浜市建築局「未来プロジェクトチーム」、鵜澤聡明建築局長
 
 
 

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